タネと農を考えるレポート     

vol.1 オーガニックのタネ

日時: 2013年6月30日10:00~12:30

友人が主催する、渋谷の某所で開催されたセミナー「オーガニックの種 ~ 本物のお野菜のお話」に参加してきました。そこで聞いてきたのは「オーガニックのタネ」のはなしです。
そこで聞いてきたお話を踏まえて、オーガニックや、タネ、農業、食の安全などについて、いろいろ学んだことを、まとめてみたいと思います。

ところで皆さんは、オーガニックといえば何を連想するでしょうか?無農薬・無化学肥料?

USDA オーガニック マーク
 

アメリカ農務省認定のオーガニックマーク(左)と、JAS認定のオーガニックマーク(右)

Is Organic Really Better?」でもお話ししましたが、オーガニック食品とは、石油から生まれた農薬・化学肥料はもちろんのこと、人工成長ホルモンや、抗生物質、放射線など使用されていない、言ってみれば私達の祖父母が単純に「食品」と呼んでいたもの。

この実にシンプルで、あたりまえの食品が、近頃では「オーガニック」あるいは「有機」と表示されたものを探さなければ、食べることができないのが現代です。

もっというと、いまスーパーに並んでいる、私達が「普通」と思っている食品は、農薬・化学肥料、抗生物質、添加物、放射線などが何らかの形で使用されたものばかり。一昔前は存在すらしなかったものです。

そう思うと、私たちが当たり前に思っている食品、なんだか不思議なものに感じられませんか?


では、「オーガニックのタネ」とは何か?というと、オーガニックに育てられた植物から採取されたタネのことを言います。

それは、とてもシンプルなことのようですが、実は日本ではオーガニック野菜であっても、タネはオーガニックではない場合がほとんどだそうです。

今回のセミナーの講師Tさんは、有機農産物の普及に携わる活動の中で

ある年、アメリカから日本の有機農場を視察に来た教授を案内する機会を得たそうです。

ひととおり有機農場を見学した教授は、おもむろに尋ねたそうです。

 

「あなた方の取組みは大変素晴らしい。・・・ですが、種はどうされているのですか?」

 

それは、当時の日本のオーガニック農家にとって、予想外の質問で誰もまともに答えることができなかったそうです。

もちろん、無農薬・無肥料。土作りに関してはこだわっていたものの、タネは大手種苗店から購入したものも、特別疑問に思わず使用していたとか。

それは、海外のオーガニック農法では非常識なことでした。

 

日本で有機農産物を認定しているJASにおいても、有機の種および有機の苗を使うことを定めていますが、入手困難な場合はその限りではないとしており、矛盾しています。


でも、種苗会社から買うタネの何が問題なのでしょうか?

ざっくりまとめてしまうと、以下の2点があります。

  1.  農家さんが種苗会社に依存する経済構造
  2.  不自然なタネ

種苗会社が扱う種のほとんどが、私たちのメルマガでも何度となく取り上げている、F1種と遺伝子組み換え種です。

農家さんが種苗店からタネを買わなければならない理由のひとつに、F1種が市場において抜きん出た競争力を持っていることがあげられます。

  • 消費者にとっては、味がよく、色・形のよいF1は魅力的です
  • 販売店にとっては、大きさ・形が均一なF1は販売が容易です
  • 生産者にとっては、成育が均一で病害虫につよいF1は育てやすく、経済的です。

良いことだらけです。

このF1種をオーガニックに育てて、自家採種したらよいのでは?と思うかもしれません。
ですが、そうはいかないところに、このF1種の最大の問題があります。

実は、F1の優れた性質は1代限り。そのタネにそのまま受け継がれることはないのです。
(これは、メンデルの法則として知られています)

生産者が、F1作物からタネ取りをして、翌年撒いたとします。
すると、味の良いものも、悪いものもあり、品質にばらつきが出ます。
さらに形状もまちまちで、育つ速さもバラバラ。
これでは、均一な味と形と価格を望む市場経済には受け入れてもらえません。

講師のTさんは、

「スーパーで買ったスイカの種を撒いたらカンピョウができた」

という逸話を紹介していましたが、スイカとカンピョウを掛け合わせた雑種1代目はどれもスイカの実がなるけれど、二代目からは、スイカだけじゃなく、カンピョウの性質を持つものもあらわれはじめるということではないかと思います。

こうした理由から、生産者は翌年も、その次の年も、永遠に種苗会社からタネを買い続けることになります。
ここで生産者が種苗会社に依存する構造が出来上がります。

さらに遺伝子組み換え種になると、この関係は法的なものになります。タネが特許で守られていることから、自家採種することは複製品を作ることと同様と見なされ、固く禁じられています。

「種子を制する者は世界を制する」という言葉があります。

これは、何を意味するか?

食べることは生きることです。だから、農作物は命のもと。
その農作物のタネを制することは、食を支配すること、つまり世界中の命を支配することにつながります。

農家さんが、種苗会社からタネを毎年買うということは、私たちの命(食)は、種苗会社に委ねられているとも言えます。

こうした生産者と種苗会社との関係は、近年問題視され始めています。

モンサントといった、多くの遺伝子組み換え種の特許を持つ多国籍企業のビジネスのあり方が問題になっているのは、そうしたことも背景にあるのです。これについては、映画「モンサントの不自然なたべもの」が詳しいです。

 

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「品種改良」という言葉をよく聞きますね

より美味しく、病害虫に強く、形のそろった美しい野菜・果物達を生みだす技術

でもその一方で、数十年の歴史しか持たない「最先端の科学技術」が種子という何億年にもわたる情報を継承し、動物たちを育み続けてきた命の根源に操作を加えることのリスクを、私たちは正確に把握できているのでしょうか。


2012年の9月、ヨーロッパのある研究グループが、安全性が確認されているはずの遺伝子組み換えトウモロコシに発がん性があるという実験結果を発表しました。

この詳細は現在渋谷のアップリンクで公開されている、「世界が食べられなくなる日」という映画で見ることができます。実験では、遺伝子組み換えトウモロコシを混ぜた餌を、ラットに長期間与える実験を行ったところ、腫瘍の発生率および死亡率が通常のラットの2~3倍になったということです。

驚くのは、この腫瘍の大きさで、ピンポン玉大の腫瘍が2、3個発生しているのです。山崎淑子の「生き抜く」ジャーナルにその写真が掲載されています。


映画『世界が食べられなくなる日』

安全が確認されていたのになぜ?と思われるかもしれませんが、世界的権威であるFDA(アメリカ食品医薬局)が遺伝子組み換え作物を認可する前提となっている実験期間はたったの3 ヵ月。ラットへの異変は実験開始から、4か月過ぎたころに現れ始めました。

「直ちに影響はありません」というセリフ、聞いたことありますね。まさにそれだと思います。
映画の中でも言われますが、私たち消費者は長期実験中のモルモットのようなものです。

それは放射能汚染に限らず、遺伝子組み換え作物をはじめ、多くの添加物・農薬についても言えることなのかもしれません。

 

映画『世界が食べられなくなる日』

Tさんのオーガニックの種 ~ 本物のお野菜のお話」のセミナーでは、こうしたお話を導入に、さらに突っ込んだ内容へと踏み込んでいきました。それは、ホームページ上で公開するには、少々デリケートな内容なので、メルマガ「cotona」の方でご報告させて頂きたいと思います。

また、映画「世界が食べられなくなる日」については、東洋経済ONLINE 原発と遺伝子組み換え作物は非民主的だ 『世界が食べられなくなる日』 ジャン=ポール監督に聞く   に 

にも詳しいレポートがありますので、ご興味のある方は読んでみることをお勧めします。

レポートのつづき

  とっても身近な遺伝子組み換え作物 その1 (cotona 第13号 2013年8月4日 発行)

とっても身近な遺伝子組み換え作物 その2 (cotona 第14号 2013年8月18日 発行)

soそおそ そそ

世界を掌握する種子ビジネス~食糧問題をタネから考える~/BS11・本格報道INsideOUT

2013年8月6日放送のBS11・本格報道INsideOUT <新・ニッポンの危機 回避のシナリオ> 「世界を掌握する種子ビジネス ~食糧問題をタネから考える~」です(41:09)


世界を掌握する種子ビジネス 投稿者 tvpickup

タネを知る おすすめ書籍 & DVD

書籍
F1種について知る

野口勲 著 :固定種のみを扱う全国でも唯一の種苗店「野口のタネ」の三代目主人。市場に氾濫するF1種の危険性、雄性不稔、ミトコンドリア異常、消えたミツバチの謎。さまざまな角度から、現代の市場主導経済の中でのタネのあり方とその影響を考察し、命の尊厳、自家採種の大切さ、家庭菜園の普及を訴えます。

遺伝子組み換え種について知る

安田節子 著:著者は「食政策センター ビジョン21」主宰人、NPO法人「日本有機農業研究会」理事。本書は、工業的農業の矛盾を暴きつつ、その構造を徹底解剖。モンサントなどの巨大アグロバイオ企業が、遺伝子工学を駆使した生命特許という手法で種子を独占し、世界の食を支配しつつある世界の種子ビジネスの実態を知ることができます。タイトルの「自殺する種子」とは、いわゆるターミネーター技術で作られた種子を指し、この作物のタネを採って蒔いても、けっして発芽しない技術です。というのも、発芽しようとする種子はすべて自殺するように、遺伝子組み換えによってプログラムされているからです。

DVD

キングコーン 「あなたの体もトウモロコシでできている?」

私達が普段何気なく食べているもの。その正体をしろうと、二人の素人は農業に挑戦。遺伝子組み換え種のトウモロコシは、驚くほど簡単に収穫できる。この後出荷されたトウモロコシは、どのようにして消費者の食卓にとどくのか。二人はその行方を追いかけ、現代の食品産業の実態を目の当たりにしていきます。

製作年 2007年 / 製作国 アメリカ / 配給 アップリンク / 上映時間 90分

 

自然農や固定種・在来種にこだわる お店の紹介

 

固定種のタネを買う

野菜・米を買う

食べる (注:菜食レストランではない場合があります)

タネについて学べるリンク集

やすだせつこ.com

遺伝子組み換え食品、食糧安全問題の専門家、安田節子の公式ウェブサイト。遺伝子組み換えについて、非常に多くの情報がまとめられています。

ありがとうございました


講演会

「いのちの種を未来に」 
講師:野口勲 

2013年9月21日(土) 
日本で唯一、固定種のみを扱う「野口の種」の主人、野口勲さんをお招きして講演会を開催しました。
用意した50席は1週間前に完売。


関東では初めての、4時間の講演。
長丁場にもかかわらず、熱心にメモを取りながら講演を聞く参加者の姿が印象的でした。

講演終了後に開催した懇親会では、野口さんを囲んで、サン・スマイルさんが提供する固定種野菜を使った料理を楽しみながら、親睦を深めました。

講演のより詳細な模様は、近日中にサイト上でご報告させて頂きます。

(写真上) セミナー会場は満席でした (下)懇親会でお出しした料理。固定種のナスは野口さんが開発にかかわったもの。